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締付トルクの決め方

​あなたはどのようにねじの締付けトルクを設定されていますか?​

「このサイズはこのトルクでしまめしょう」といった締付トルクの規格は

残念ながらJISなどの公的規格において存在しません。

「前回のモデルで使ったねじを採用しているので同じ締付けトルクにしている」

「締付けトルクは他部署が決めている」

「取引先やネットから入手した参考締付けトルク表を基に決めている」

​こういった方が多いのではないでしょうか。

「70%」

これは、名古屋工業大学の教授が行った「ねじ締結のトラブルに関する実態調査」の結果です。アンケートに答えた製造業121社の70%が、ねじ締結のトラブルは

「しばしば起こる」「たまに起こる」と回答されたそうです。

そして、ねじ締結のトラブルで最も発生件数が多いのが「ゆるみ(脱落)」で、次いで

「疲労破壊」という回答結果となっています。

そもそもねじはどうして締付トルクで管理するのでしょうか?

​ねじはトルク(回転力)を加えることで部品を圧縮(固定)します。

​この圧縮する力を「軸力」と言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軸力を測定する装置は世の中に存在しますが、手間とコストがかかる為、管理が容易な「トルク法(締付の際のトルク値で管理する)」がほとんどの製造現場で採用されているのが実情です。

では、いくつのトルクで締めればいくつの軸力が生まれるのでしょうか?

そこで多くの方が参考にされているのがトルクレンチメーカーの東日製作所が作った

T系列標準締付けトルク規格 です。

 

file:///C:/Users/you-n/Downloads/02_bolt_tightening.pdf

T系列標準締付トルク規格にはねじの強度区分を基に各サイズの推奨締付トルク及びそのトルクによって生まれる軸力が明記されています。

最適なトルクとは何でしょうか?

それは、​ねじ浮き < 最適なトルク < 雌ねじ破壊・ねじ破断 です。

 

ねじには引張力が、被締結物(中間物)には圧縮力が働き、これらの力が

存在することにより結合部に大きな力がかかってもねじが容易に緩まないのです。

ねじ締め作業とは、ずばりこの力学エネルギーを加える作業なのですが、このような

​大事な作業の重要要素である締付けトルクを上記のような理由で決めてしまうことは

ねじ締結のトラブルにつながりかねません。

以下の要素が1つでも変わることで締付けトルクを見直す必要があると言われています。

例、

  • 相手材の材料が変わった

  • 相手材の厚みが変わった

  • 被締結物(中間物)の材料が変わった

  • 被締結物(中間物)の厚みが変わった

  • 下穴寸法が変わった

  • ばか穴の寸法が変わった

  • ねじのサイズや寸法、メッキ、ねじ部のタイプが変わった

  • ねじの材質が変わった

  • 締結工具が変わった

  • そのねじを使って組み立てる製品や部品の使用環境が変わった

締付けトルクは一般的に以下の計算式が用いられています。

 T = K・・Ff

 T : 締付けトルク(N.m)

 K : トルク係数0.2 (μ≒0.15)

 d : ねじの呼び径

​ Ff : 軸力[N]

 

この計算式で算出される締付けトルクの数値はあくまで

  • ボルトとナット

  • 小ねじとインサートなどの成形品の雌ねじ

の組み合わせを想定して軸力を基に考えられたものです。

これらの組み合わせでの各サイズの推奨締付けトルクは、トルクレンチメーカーとして

有名な東日製作所様のこちらの資料をご参照ください。

file:///C:/Users/YAMATO-PC/Downloads/02_bolt_tightening%20(2).pdf

 

一方で、雌ねじを用いず下穴に直接タップをたてながらねじ込む「タッピンねじ」や

「タップタイト®」は、軸力での管理が難しく、相手材等の条件の違いによりねじ込む際に必要な締付けトルクが異なりますし、比較的柔らかい材質の相手材が多い為、過度に締め付けると下穴を破壊してしまいます。

その為「タッピンねじ」や「タップタイト®」は締付けトルクの繊細な管理が求められます。

それでは、「タッピンねじ」や「タップタイト®」はどのように締付けトルクを決めればいいのでしょうか?

「タッピンねじ」や「タップタイト®」の締付けトルクは次のような条件で決める必要があります。

 ねじが着座するトルク < 締付けトルク < 雌ねじ破壊トルク

                       雄ねじ破断トルク

                       被締結物の強度

                       座面の強度

締付けトルクは、ねじが着座するまでのピークトルクよりも高く、雌ねじ破壊トルク・雄ねじ破断トルク・被締結物の強度・座面の強度よりも低く設定すればいいのです。

例、

ねじが着座するまでのピークトルク:0.20N.m

雌ねじ破壊トルク:1.00N.m

と仮にした場合、締付けトルクは、0.21N.mから0.99N.mの間に設定すればいいことになります。 しかし、トルクにはばらつく要素が複数あります。

例えば0.21N.mでドライバーのトルクを設定してねじを締め付けた場合、ドライバーのトルク精度により実際の締付けトルクがねじ着座トルク0.20N.mよりも低く出てしまうと、ねじ浮きが発生してしまう可能性があります。

ドライバーのトルク精度以外にもねじや下穴の寸法のばらつきや、メッキの膜厚等でもトルクがばらつく可能性があります。

その為、それぞれのばらつきを考慮し標準偏差を用いた統計的手法で締付けトルクを設定する必要があります。

ただ、これらを1つ1つ確認する作業は大変です。

そこで弊社では、トルクアナライザーを使って締付けトルクを算出することを推奨しております。

 

 TD: ねじが着座するまでのピークトルク

 TS: 推奨締付けトルク

 TF: 雌ねじ破壊トルク or 雄ねじ破断トルク

 

トルクアナライザーを使うことでTDTFを測定出来、その2つの情報からTSが自動算出されます。

先述のとおりTSTDよりも高く、TFよりも低い必要がありますが、前提としてTFTD2.5~3倍以上あることが望ましいとされています。

この2.5~3倍という数字に根拠はありませんが、これだけの幅があれば仮に締付トルクにばらつきが生じてもTDTFの間におさまるであろうという考えです。

そして、TSTDTFの中央(40-60%)を狙い値とします。

トルクアナライザーを使って試験を行うメリットは、実際に製品を組み立てる際に使う

  • ねじ

  • 相手物

  • 被締結物

  • 工具と同じ回転数

でシミュレーションが出来ることです。

これにより締付けトルクはもちろんのこと、下穴寸法が適正かどうかの判断や、ねじの頭部が小さいことによる中間物の陥没時のトルクなども測定が可能です(※ただし、陥没時のトルクがTF雌ねじ破壊トルクよりも低い場合に限る)。

また、トルクアナライザーでは戻しトルク(ねじが緩む際のトルク)の測定も可能です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

​(φ4.0mm以下の)ねじの締付トルクや緩み等でお困りでしたらぜひご相談ください。

トルクアナライザー①.png
戻しトルク波形.jpg
軸力イラスト.jpg
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